かしこくなりたい!

IT好きの行政書士があちこちで入りした際に得た知見を出来るだけ放出するブログとポエム

いまさら転職エントリー テトラ・アビエーション編(空飛ぶクルマ開発)

士業(個人事務所)から事業会社へ転職して2年ちょっと経ちました。今は2社で働いています。通常、転職エントリーだと会社を移った話だと思いますが、ここでは職種を変えたことを指します。とはいえ行政書士もやってます。

私は元々航空趣味人です(航空マニアではない)。初便とか飛行機乗って航空会社のグッズを集めるのが好きで、飛行機乗ったらほぼ必ずログブック書いてもらうくらいのことはしています。

興味の範囲は自分が乗れる飛行機、軍用機は全くわからないです。

作ることはほぼ知らず、そのうちトゥールーズエアバスの工場)とエバレット(ボーイングの工場)には行きたいなー、くらい。

それがまぁ3年たつと全く知らない業界でも飛び込んでみたら何とかなりますよというお話しです。

 会社概要

2018年6月設立。ボスは東大博士課程休学中の中井さん。

資金調達数回。いわゆる空飛ぶクルマと呼ばれる航空機を開発するスタートアップ企業です。

2020年2月米国でのボーイングメインスポンサーの航空機開発コンペGoFlyにてディスラプター賞いただき、賞金10万ドル(当時で約1100万円)をいただきました。

現在の私のポジションは取締役。

時系列で言うと、2019年4月から行政書士顧問、2020年1月から正社員、2月から従業員兼務取締役になりました。 

お仕事内容はざっくりいうと飛行機作る以外、お役所とのやりとりや会議、経理のチェック、採用の入り口、メディア対応などコーポレートを担当しています。

採用しています(重要)。
航空宇宙出たけど、全然関係ない仕事していて腐っているエンジニアを歓迎します!

tetraaviation.notion.site


 

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2020年9月の学生さん向けテトラ見学イベントでのMk-3

ざっと空飛ぶクルマとは

空飛ぶクルマは電動で垂直に離着陸する航空機を指し、海外ではeVTOL(いーぶいとーる、electric Vertical Take-Off and Landing)と言われています。

日本で空飛ぶクルマと訳される時、AAM(Advanced Air Mobility)、UAM(Urban Air Mobility)、eVTOL、AirTaxiなどが混ざっている印象です。

空飛ぶクルマという名称についてよく言われることは「地上を走る乗り物じゃないじゃん!」です。名付け親は”クルマ”とカタカナの愛称とすることで車のように広く個人でも気軽に乗れる乗り物になってほしいという意図があったようです。

弊社では対外的にわかりやすく「空飛ぶクルマを開発しています」と言いますが、心の中では”ドローン”という単語のようにeVTOLという言葉で通じるようになってほしいなと思っています。

世界の空飛ぶクルマスタートアップ

世の中では様々な空飛ぶクルマが開発されていて、もはや3桁億円の資金調達やSPAC上場もめずらしくないです。なお、今のレートだと1million USD(1億ドル)は130億円です。

 Joby(アメリカ)

car.watch.impress.co.jp

Lilium(ドイツ)

techcrunch.com

 Volocopter(ドイツ)

venturebeat.com

EHang(中国)

asia.nikkei.com

Vertical Aerospace(アメリカ)

evtol.com

Wisk(アメリカ)

www.reuters.com

Archer(アメリカ)

evtol.com

Beta Technologies(アメリカ)

www.flyingmag.com

Kitty Hawk(アメリカ)

aviationweek.com

Opener(カナダ・アメリカ)

www.cnbc.com

なお、数ある中でもKitty Hawkは資金調達のニュースがありません。なぜならGoogle創業者ラリー・ペイジがどーんとお金を出しているからです。Openerも同様です。

他にもたくさんありますが、このあたりが海外勢の有名どころです。

各社の飛行動画はYoutubeリストにまとめています。

www.youtube.com

知り合う経緯

2019年4月に補助金の申請書類などが多くなってきたので手伝ってくれないか、と中井さんと共通の知人から依頼がありました。

顧問は受けてなかったのですが、2018年から喘息持ちになり仕事ができないほど具合悪い時もあって、固定で入ってくる仕事もしないと収入的に死ぬ、という危機感から一旦業務内容を把握すればコピペ+アレンジでのんびり申請していけるだろうしおもしろそうだからという理由で月額5万円で引き受けました。

すでに中井さんが1件補助金申請を出していたのでその書類をもとに(技術面はさっぱりわからないけど)、まぁきっとこんな感じのことがしたいのかな?と書類作りました。

たいして説明していないのに事業内容理解してたのが中井さん的にはよかったらしく、2019年6月にこなした申請は5種類。そもそも抱えてる案件もあり、この金額じゃ限界だ!と思ったので支払いは資金調達後でいいから7月以降の報酬あげてくれと交渉しました。すると、「それでいいのでついでにオフィスに週1くらい来てください」ということになった。

メンバー登録は40人ほどいたので、メンバー一覧を印刷し、誰か手伝ってくれるだろうと1人1人だれが何の役割か聞いたら、エンジニアしかいなかった。そりゃメディアの取材やお役所会合についていく人もいないわ。

とりあえずメンバーの中にいた東大の学生さん2名をインターンとしてつけてもらうことにした。この子たちは本当に優秀でこの子たちいなかったらとっくに辞めてたな、というくらいほんとによくお手伝いしてくれた。

その後週1は週2に、気づけば泊まり込みに、そして2020年2月のGoFlyは当然行くことになっていた。この頃はエンジニアじゃないのに何しにアメリカへ行くのだろう、、、ご飯作ったらいいのかな?外国人の航空機開発トークに私が入れるわけない(꒪ཀ꒪)ミリオタ的なマニア要素もないのに全然わからん(꒪ཀ꒪)と思っていた。

顧問から正社員、そして役員になる

ある日、アルバイトが実質1号社員になることになりこの手続きは行政書士の報酬ではできないねぇとなりました(社労士法違反)。

そもそも行政書士登録をするときに一生この仕事をすると思ってもいなかった。

金額も大きく期間も長い、そもそも日本の航空機の歴史を考えたら壮大な話だし、航空機を製造する事業をするような規模の会社はなかなかない、同じ報酬なら会社員になるのもいいかも?という考えに至り、私も正社員になることにした(正社員が社会保険手続きするのは問題ない)。

先にSWALLOW社の業務執行社員になることが決まっていたし、個人事業の行政書士もいきなり辞めることはお客様を抱えていてできなかったので副業として認めてもらった。

そして正社員になった数日後に言われたのが「取締役になってください!」でした。弁護士の友達に話したらそれは絶対受けるべきだと言われる。

引き合いに出された記事はこちら。

www.nikkei.com

確かに海外の投資家に国籍や性別が多様であることを伝えるととても好印象だった。

日本でも取締役の女性比率を上げるため、社外取締役に女性弁護士を入れたいというオファーがとてもあるらしい。そう言われると確かにその事例知っていたし、他にもお友達の男性弁理士社外取締役としてCIPOに入っていたことが思い出された。

社外取締役という選択肢もあるんじゃないかと中井さんに伝えたような気もするけど、LEAN INの気持ちでありがたくお話しをいただこうと決めました。

なお、役員経験は初めてではないです。家業(土木造園業)で一時期あとを継いで従業員10人ちょっといました。あと自分で起業を試みて失敗した経験もあります。

アメリカのeVTOLの開発コンペに行く

大会直前は徹夜でみんなのお給料や経費の計算していた、あの日はつらかった。

ご飯作ったり、誰かが帰国する日は空港まで送ったり、中井さんのスピーチの練習の相手をしたり、機体にカッティングシート貼り付けたり、派遣会社の愚痴を聞いたり、印刷会社に連絡して不良品交換したり、一番遅く寝て一番早く起きていた。

大会当日は、投資家セッションや投資家とかがいるランチ会に参加し、ちゃっかり名刺をもらって面談アポとったりもしていた。やらねばとなれば何でもできるのですよ。

結果として大会に出したレースモデルのMk-3は唯一賞をいただき、ステージにも上げていただきとても貴重な体験をしました。

開発の道のりは動画でまとまっています。


www.youtube.com

大会後、中井さんと投資家巡りしようとしたらロックダウンになってしまい、全部オンラインになったことが相手もこちらも困惑だったりもしたけど、いくつかは回ることができたので、ご縁に感謝してる。

その後の今に至るお仕事

日本に戻ってからは商業用モデルのMk-5の開発が始まりました。

2021年夏にアメリカでの飛行試験をまとめた動画を出しています。


www.youtube.com

おかげさまでほぼ毎月どこかのメディアに取材していただいたり、あちこちのカンファレンスでのイベント登壇のご依頼をいただいています。

メディアに出るときの先方とのやり取りは私が対応しています。加えて媒体もですが、書いてほしい記者さんを見つけて声をかけています。メディア向けに事業説明もしています。

取材やイベント登壇はほぼほぼ中井さんですが、急ぎの場合や学生さん向けのイベントは私が出るときもあります。また勉強会でお話しすることもありました。

珍しく私のコメントが載っているケース

www.yomiuri.co.jp

英語でも答えた。

evtol.com

 

他には

補助金の申請や中間報告など

あちこちのお役所との会議、シンクタンクや役所からもお話し聞かせてくださいとかもよくあります。

“空飛ぶクルマ”の産業形成に向けて―地域での産業形成の核となる「インテグレーター」への期待― | PwC Japanグループ

弁護士・税理士・社労士をはじめとした士業とのやり取り(弁理士は最初のお願いだけでもうエンジニアとだけ話しています)。

変わったことだと社宅の物件探しも。(決まった後はギークハウスのみなさまの協力により家電をもらいました、ありがとー!)

事務処理は外注の事務作業の方がいるので、入力してもらったあとに会計ソフトや勤怠ソフトのチェックをして最後に士業のチェックと3回見れる体制にしています。

財務は外部アドバイザーがいるので月1くらいで話したりします。

他にもエンジニア採用のためにあちこち見てたり、海外のジョブフェアや日本の海外コミュニティでの会社紹介ピッチにも出ました。
外国人採用したらビザの手続きも自分でします、行政書士なもんで。

あと、漫画もポプラ社さんにお願いして作りました。

これは小中高生だけではなく、大人のみなさまにもわかりやすくしていますので買ってください。最近は初めての面談の前にこれをお読みいただくことをお願いしています。

この会社で働く楽しさ

日本は第二次世界大戦後にGHQから飛行機作っちゃだめよとなってから、規制が解かれてYS-11という飛行機を作り上げ、ちょっと途絶え、そこからMRJ、HondaJetと続くはずが事業が続いてなかったり、えらい売れていたりという世界線の中にいます。日本の航空部品や部材は元々すごく強いです、boeing787とかね。

最終製品も日本から海外へ売りたいじゃないですか。それをスタートアップからって単純にすごくないですか?政府の成長戦略にも入っていて、2025年の大阪万博では目玉事業にもなってるんですよ。

そして東日本大震災からの復興として、福島ロボットテストフィールドという場所を活用して新しい産業創造をするとかどれだけ大きな話なんだってことですよ。しかもロボットテストフィールドにはさまざまなスタートアップがいて、ご縁あってお話しさせていただける会社さんもたくさんいて、みんな新しいことをしているのでとても楽しいですよ。

GoFlyに行ったときに体感しましたが、アメリカは家族の範囲内で誰かがパイロットライセンスを持っているので、私たちの活動に身近なものとして共感してくれていました。

また、空飛ぶクルマを作っていることに対する評価として、日本だと「規制産業だから難しいでしょ。」から始まることが多いですが、アメリカだと「すごく面白いね!どういう構造なの?プロペラはいくつ停止することまで許容しているの?」と飛行する前提で聞かれることが多いです。

これは国民性として、許可がなければやっちゃいけない日本と、禁止されていなければやってよいアメリカの違いかと思います。

象徴的だなと思ったのが、「偉人であるライト兄弟は初飛行の時に何か許可とったの?あんな偉人ですら最初は許可がなかったんだからイノベーションを起こそうという人にまず許可を求めるのはナンセンス」的なことを社内の人がアメリカ人に聞いたそうで、めっちゃ納得しました。

日本においては宇宙まで行く乗り物には寛容だけど、目に見える範囲に新しい乗り物が出てくるのは怖い、という国民感情は便利さだけでは乗り越えられないので、空の移動が身近なものに思ってもらえるよう地道なPRとか公共政策の研究などやらないとな、と感じています。

そこでこれからの航空産業を作っていくのに政策の知識も入れなきゃなと思って2020年4月から政策研究大学院大学で社会人修士コースにも通いました。これはまた後日のブログで。

 

新しい飛行機がみんなをワクワクさせることは787のデビューの時に航空趣味人として体感してます。見上げて前を向く乗り物ってわくわくするんだなーといつも思います。

大人数、長距離輸送の航空機がなくなることはなく、空飛ぶクルマはリプレイスではなく、新たな移動手段の選択肢を増やす乗り物。

特に空飛ぶクルマはコストになっている移動時間を減らしていくもので、決してローカル電車の旅を否定するものではないです。電動キックボードもそう。

「空」はソラとカラ(empty)とどちらにも読めるのはソラには何もないからかもしれませんねー、空飛ぶクルマが出てきたらカラの字は変わるかもしれないですねー的なプレスリリースの締めの言葉を前に考案したのですが、却下されました。でしょうね。

絶賛してね!とは言いませんが、わくわくする乗り物で外貨を頑張って稼ぎますので応援よろしくお願いします!

つらいことも多いですが、私は元気です。

 

webで見れる空飛ぶクルマ記事。

wisdom.nec.com

www.nikkei.com

www.netdenjd.com

BSNHKでドキュメンタリーにもしていただきました。

 

 

おまけ。

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大阪ラウンドテーブル設立式

1社1名で吉村大阪府知事との写真撮影に写る人と写真を撮る各社お連れの人たち。