かしこくなりたい!

IT好きの行政書士があちこちで入りした際に得た知見を出来るだけ放出するブログとポエム

2つの事業会社で働き、大学院に入学し公共政策を学ぶ

2020年2月から空飛ぶクルマを開発するテトラ・アビエーション株式会社と電動キックボードを開発するSWALLOW合同会社で働きながら、2020年4月に乃木坂にある政策研究大学院大学(Grips)科学技術イノベーションプログラム社会人修士2年コースを修了した記録です。

今までの学歴

明治大学短期大学法律科卒業
大阪大学法学部3年次編入学、卒業
電気通信大学ウェブシステムデザインプログラム単位取得

しています。

明治では死刑制度・少年法について、大阪大学では国際私法のゼミにいました。他学部の授業としてマーケティングを取って他の大学のゼミにも通っていました。

経歴にならない学業としては平成19年まで旧司法試験を受験するために司法試験予備校とかも通っていました。そのため基本的な法律の考え方の素地はあります。

 

入学したきっかけ

いましたが、知財に興味があり出会った知財マネジメント研究会Smipsのご縁で政策研究大学院大学の隅蔵先生と出会い、ふと2020年から科学技術イノベーションプログラムという社会人向けの平日夜と土曜で修士が取れるコースを知りました。

2019年から電動キックボードと空飛ぶクルマと言うルールメイキングや政策決定が大きく関与する事業に携わるようになり、今までもグレーなビジネスの相談があったけれども少し体系だって学ぶ必要性を感じていました。

またテトラ社でアメリカに行くにあたって役員として修士は取っておいた方がいいだろうという気持ちもあり、ちょっと頑張ってみるか!と入学しました。

入学試験で「法律と政策はちょっと違うだけど大丈夫かな」とみたいなことを言われるも、違うと思うけどなぜいま私はそこまで心配されているのだろうか?と感じるほど法学部の考え方とさほど変わらんやろという甘い考えでいたのでした。

前提知識が足りなさ過ぎてついていくのに必死な1年目

科学技術基本計画
成長戦略実行計画
成長戦略フォローアップ

統合イノベーション戦略
統合科学技術・イノベーション会議(CSTI)

今まで縁がなさ過ぎて、ニュースの片隅に聞いていたくらいの単語が羅列された文章が山のようにやってきて、もう毎週毎週読むのに必死でとりあえず文章を浴びていた。

かと思えば、IT関連のスタートアップをウォッチしていれば知っているのでは?という内容もちょこっとあったりして、知識のギャップがまずいなという印象を受けていた。

ちょうどコロナ禍に突入した時で、入学式も授業もすべてオンライン。同級生は公務員や一昔前なら国営企業というやつでは?というような会社にいる方々で、気軽に話しかけられるもんなのかもよくわからず、ずっと不安なまま夏まで過ぎていきました。

夏のほんのわずかの緩和された時期に交流会

大学院にはSciREXセンターという期間も併設されていて、共催でサマースクールが開催されるのです。ここにも事業会社の新規事業担当の方や国家公務員の方が多数参加されており、そのうちの一人が交流会を主催してくれて初めて同級生にお会いできました。

Gripsの学生は半分が国家公務員や地方公務員、半分が留学生で事業会社から来る人は少数派です。ましてやスタートアップの人は一つ下の学年にVCの方がいるかな、という程度です。勉学もさることながら、垣根を超えた交流関係が作れることもこの大学院の魅力です。

その後揃って同級生に会えたのは10月でした。みんな優しく、いろいろな国家公務員のお作法も学びました。あの同級生じゃなかったら心折れていたと思います。

印象に残っている講義・出来事

フォーサイトとバックキャスト

未来から今何をやるべきか考える思考方法です。大学院ではワークショップ形式でサマースクール期間に行われました。

ワークショップ中はよくわかっていなかったのですが、最終日にほかのチームの発表を聞いて目からうろこが落ちました。少なくとも科学技術に興味がある数十人が集まる中で、それ2030年にその程度しか日本は進まないと思っているのか!?もう今できそうなことばかりみんな発表している。。。と思ってしまいました。見えている未来が違う、それに気づけたことがフォーサイトのいいところです。

自分はスタートアップの子たちの中にいるので、あんな新しいことをやっている人がいるとかこの技術が面白いとかこの人をフォローしていれば情報が入ってくるという「探す勘所」が染みついています。勘所というのは知識があったり技術力があるとはまた少し違うかなと思います。

この勘所がある人をどうやって増やしていくのかについてはまだ研究を見つけられていません。勘所がある人はない人に説明したくて情報収集しているわけではなく、お金儲けしたいわけでもなく、純粋に「面白くて、最先端のすごい技術で世界を変わること」が好きなのです。そこに対して、お金の匂いを感じて世の中に広めていく人はまた違う才能だと思います。

この振り分けが如実に表れる手法の1つがフォーサイトではなかろうかと目からうろこが落ちました。

www.jst.go.jp

政策は必ずしも法改正を伴わない

総合科学技術・イノベーション会議の上山先生とランチに行った時のこと。

「法改正を伴うような政策は今まで1つくらいしか関わったことないよ」と聞きました。法学部の感覚からすると、違憲判決や事件などが起きたときに法改正が行われることが前提になっているので、全部とは言わずとも規制緩和に伴う法改正などはある程度の数があると思っていました。

にもかかわらず、空飛ぶクルマもルールメイキングが必要で、電動キックボードも規制緩和の法案が出されてくるってすごいタイミングの世界線だなと感じています。

データに基づく政策形成としてEBPMという言葉をよく見かけるようになりました。そもそもなぜ今その制度できたのかという趣旨へのリスペクトと、技術革新によるもう●●は技術で解決できるというバランス感覚が政策形成で求められているのだなと再認識しました。

起業家を増やすことは政策の1つ

どうしたら起業家が増えるのか、ということもよくテーマに上がりました(アントレプレナーシップ)。

私の周りには起業したいという人が相談にやってくるので、起業してみなよ!と背中を押す必要はあまりないと感じています。たまに例えば借り入れなど、制度として何とかなるんじゃないかという安心感を得られる、家族に説明ができる要素をお伝えして最後の一押しをするくらいですね。

起業したい人に対するフォロー、背中を押して持ち上げるフォロー、起業することをそもそも知ってもらうフォローとで関係する人が違うのです。

士業で言うと、単に制度がこうだから言われた申請や手続きを手伝うではダメで、起業家から聞いた内容を事業内容も含めて0から説明を受けずともイメージがあり、関連しそうな法律や制度が浮かび、聞いたこと以上に起業家がNextStepに進められるように話をすることが必要です。

自分はどこのフォローがしたいのかなと考えるに、圧倒的に起業したい人で世の中全体を底上げするようなフォローは他の人に任せる、と振り切るのがいいな、と思えたのは起業家を増やそう、産学連携を増やそう、という授業でした。きっと士業としてはこのフェーズが同じことの繰り返しになりそうでお金になりそうな気もします。

研究内容

修士論文は自社で実施している新規事業特例でのアンケートと自社のアンケートをベースに「イノベーションの社会的受容における業界団体の発足と規制緩和への影響:電動キックボードの事例」というポリシーペーパーを書きました。

あまりに筆が遅く、指導教官の心配する心を通り過ぎてイラつかせるくらい進まなかったのですが、出来上がってみれば次はこのステップだなと見えてくるものもあり、心のハードルが一つクリアできたんだなと感じることができました。指導教官のおかげ。

卒業こそしましたが、事業会社に所属しながら次の研究テーマが浮かぶところもあり、入学してよかったなと心の底から思えます。

時を同じくして、内閣をはじめスタートアップに対する底上げや産学連携に対する提言が出てきて、やっと日本も3桁億円の資金調達が可能な夢が持てるスタートアップを育てる土壌ができる機運がやってきたなと思います。

内閣官房 新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html

経団連 スタートアップ躍進ビジョン

https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/024_honbun.html

経団連 スタートアップエコシステム

https://jane.or.jp/tag/startup_ecosystem/

こういったビジョンの策定には新規事業にかかわる文系⇔理系人材の厚みを増すことにもあると思うので、少なくとも夜と土曜日がつぶれますが2年間頑張ってみてください。

大学院生に与えられる自席。ほぼオンライン授業だったので使うことがなかった